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富士登山 第七話 「嫌な予感」

「なんか、一回座ったらまた立つ気がせんねぇ」
「もう眠たいしねぇ。もう夜中の1時よ」
「ほーやねぇ、眠いねぇ・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「いかん!このままやったらここで寝てしまう。行くぞ!」

ポンの一言で、再スタートを切った我々。
今度こそ、本物の8合目を目指すのだ。

とにかく、足元を照らすライトだけを追いかけていく。
少しずつ、淡々と、一歩ずつ前に進む。いつかは山頂につけるという事実だけを信じて。

しかし、そろそろ皆の体にも異変が起きてきていた。
ぎの、じゅんちゃんは体力的にかなり辛そうになってきており、足取りが明らかに重くなってきている。
てりは、足の付け根が痛むらしく、「コマネチが痛いんよ!コマネチが!コマネチ!」と連呼している。
すーちゃんは左コマネチをやられているらしい。
この時点でまだ元気なメンバーは、ポン、やっくん、俺の3人となった。と思っていた。しかし…

8合目も近くなってきた頃、俺は自分の体に異変が起きていることに気づいた。
「なんか、ちょっとだけ吐き気がする…?」
いや、まさか。ちょっと疲れただけだ。そう思おうとした。しかし、事前に調べておいたある知識が、頭の中で強く主張するのであった。「これはいわゆる高山病じゃないのか?」

高山病:
低酸素状態に置かれたときに発生する。高山では空気が地上と比べて大変薄いため、3000メートル級以上の高山に登ったときに極端な酸欠状態に陥った場合に、さまざまな症状が現れる。 主な症状としては、呼吸困難、頭痛、めまい、食欲不振、脱力などである。他にも、手足のむくみ、睡眠障害、運動失調なども挙げられる。低酸素状態において6~12時間で発症し、一般には4~5日後には自然消失する。しかし、重症の場合は高地脳症や高地肺水腫を起こし、死に至ることもある。

その時点では、「頭痛、吐き気がしてきたら高山病かも。重症になったら、かなりヤバイ」くらいの認識であったが、いずれにしても高山病の症状が強くなってきた場合、それ以上登山することは無理で下山しないといけないことはわかっていた。
が、ここまで来て一人で帰るわけにはいかない。このチャンスを逃したら、次いつ来れるかわからないのだ。俺はとりあえず、吐き気は無かったことにして登ってみることにした。
by yana_yana | 2007-09-09 21:24 | ☆日常


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